火星で起こったレオス・クラインによるクーデター事件から数年…。 火星での騒乱の後、地球政府は、事態の収拾と復興に、多大な労力を割くことを 余儀なくされた。 なかでも、有力な権力機構をことごとく失った火星世界の秩序の回復と維持に、 強い指導力を発揮する必要があり、そのための軍事力の増強は避けられない状況に あった。 一方の当事者であった企業体は、政府の所有する軍事力の急激な増大に対し、 自らの存在に対する強い危機感を覚え、秘密裏に各々の軍備を強化させていた。 政府と企業体との関係は徐々に悪化し、情勢は混迷を深めていった。 軍事力の確保を急いだ政府は、地上世界の開発に対して消極的にならざるを得ず、 地下世界から地上への移住計画は明確な遅れを見せ始めていた。 30年戦争の影響によって、住環境に致命的な打撃を受けていた多くの地下都市では、 現在の政府および企業体の姿勢を地下世界の住民を無視するものとして反発し始め、 各地では小規模な武装蜂起が頻発するようになっていた…。